やる気は出ない。出るのは「やり始めたあと」
動きはじめてから、やる気の話になる。
「やる気が出ないから、何もできない」。この文には、ひとつ前提が入っています。やる気が先で、行動が後だという前提です。
ただ、行動が起きるかどうかを実際に測った研究が見ているのは、やる気の量ではありません。
ここで比較されているのは、やる気の強い人と弱い人ではありません。段取りが決まっている人と、決まっていない人です。
負荷がある場面でも、合図と行動を結べるか
「やる気が出ない」の中身を分解する
「やる気が出ない」と言っているとき、実際に起きていることは、たいていこのどれかです。
- 何をするか決まっていない(決める作業が残っている)
- 最初の一手が分からない(大きすぎて、どこから手を付けるか不明)
- 失敗したときの逃げ道がない(始めると引き返せない気がする)
どれも、やる気の量とは別の問題です。そして3つとも、事前に潰せます。
合図は、気分ではなく見つけられるものにする
「やる気が出たら本を読む」では、合図がやる気なので、待っている状態から出られません。「夕食の皿を流しへ置いたら、本棚の右端の本を開く」なら、合図は目と手で確認できます。実行意図で大切なのは、立派な目標より、その瞬間に見分けられる状況です。
行動側も同じです。「読書を頑張る」では終わりがありません。「右端の本を開き、目次から気になった見出しを1つ読む」なら、開始と終了が見えます。始める前に必要な判断が少ないほど、当日の自分へ残す仕事も減ります。
- 気分を合図にしない——時刻、場所、直前の動作を使う
- 最初の動作を、目で確認できる言葉にする
- 終わる条件と、できない場合の縮小版を先に決める
逃げ道が、いちばん効く
上のメタ分析で効果量がいちばん大きかったのは、目標を始めることではなく、じゃまが入ったときの対処まで決めてある場合でした(d=.77)。
うまくいかない日の逃げ道つきの計画のほうが強い。
ランディーがやっていること
出てくる1枚には、必ずこの3つが入っています。
- 4つの手順——いつ・どこで・何を・どうやって。当日、判断するところがない
- 「もしも」——384枚すべてに、できなかったときの代わりの案がある
- 小ささ——15分を選べば、15分で終わることしか出ない
やる気を出させようとはしていません。やる気が要らない形にしてあるだけです。
もちろん、手順があれば必ず動けるわけではありません。疲労、痛み、睡眠不足、生活上の事情は、段取りだけでは消えません。その日はカードを閉じて構いません。ランディーの「もしも」は達成を強制する仕掛けではなく、元の案を小さくするか、今日はやめるかを明確にする逃げ道です。
もう1つ、目標への同意が先に必要です。実行意図は、自分が望んでいない行動を好きに変える技法ではありません。「片づけるべきだから」ではなく、「机のこの範囲だけ戻したい」のように、先に自分が選んだ目的があり、その開始を具体化するときに使います。カードが目的と合わなければ、手順を守るより閉じるほうが正解です。
そして、やらなくても何も減りません。連続記録もありませんし、催促もしません。「やる気が出ない日」を、失敗として記録しないようにしてあります。